アート系WEBサイト『雨降りと文学』 / ウェブ
WEBサイトは基本「情報」がメインであり、アート作品そのものというよりは、アート作品ないしは行動に繋ぐ「中間地点」という役割を任せられる。
むしろ、その「中間」を、どれほど美しく、かつ合理的に繋ぐか、という点に、WEBサイトという世界の「美」があるのだと思う。
その点で言えば、この『雨降りと文学』というサイトは、ある種「繋ぐ」役割も果たしている一方で、WEBサイトとしては珍しく、純粋にアート的な美しさに重きを置いているサイトと言える。
ページを開いてもらえばわかるように、余白一杯に使われた画面に、文学の冒頭部分が、雨が降るように縦長に現れては消える。
そして、冒頭文をタップすると、著作権切れの文学作品が無料公開されている「青空文庫」に飛び、その文章の続きが読める仕組みとなっている。
要するに「繋ぐ」役割も担っている、というわけだ。
このサイトの作者は、今村昼寝さんというデザインとプログラミングを学んでいる学生で、その他にも、お風呂に文字が浮かぶ「文学入浴剤」や、生け花のように小説の一節を挿すことができる「生け文」など、文学をデザインによって表現するユニークな作品を発表している。
お風呂に文字が浮かぶ「文学入浴剤」を作りました。出会った言葉や表現と、お風呂から上がるまで一対一で向き合うのが新鮮で楽しいです。 pic.twitter.com/uBxQJ4mVWI
— 今村昼寝 (@nanchakuriku02) June 27, 2021
小説の一文を一輪挿しに挿したり、花と一緒に飾ることができる「生け文(いけふみ)」を制作しています。読むでも眺めるでも無いその中間の行為で、文を「うつくしむ」ためのものです。 pic.twitter.com/MozLwypX7f
— 今村昼寝 (@nanchakuriku02) July 1, 2021
この「文学入浴剤」は、特にツイッター上で大きな話題となり、ネットニュースでも取り上げられている。
文字入浴剤は彫刻家・高村光太郎の随筆『永遠の感覚』の冒頭部分を印刷したOHPフィルムと入浴剤を小さなビニール袋に封入した作品。お風呂に入れると入浴剤だけが水に溶け、半透明の素材に印刷された文字が浮かび上がっているように見えます。
Twitterで「文字入浴剤」を発表したのは、今村昼寝さん(@nanchakuriku02)。入浴剤の使用後も文字が残るようなものにしているのは、「作者の息遣いを感じられる、ある程度まとまった文章と向き合えた方が私はうれしいと感じるため、文章の形は保ちたくこのような形を取った」と語っています。
インタビューのなかで今村昼寝さんは、このアイデアは、他人の評価やレビューなどに左右されず、文学と一対一で向き合う方法を模索しているなかで発案したものだと語っている。
ちなみに、入浴剤は森林の香りで、商品化は今のところ未定ではあるものの、今後はフィードバックも参考にしながら販売も考えているようだ。