今村昼寝『雨降りと文学』 / デザイン

WEBサイトは、基本的に「情報」がメインで、アート作品そのものというよりは、アート作品ないしは、行動に繋ぐ「中間地点」という役割を任せられる。

むしろ、その「中間」をどれほど美しく、かつ合理的に繋ぐか、という点に、WEBサイトという世界の「美」があるように思う。

その点で言えば、この『雨降りと文学』というサイトは、ある種「繋ぐ」役割も果たしながら、一方で、WEBサイトとしては珍しく、純粋にアート的な美しさにも重きが置かれている。

『雨降りと文学』

ページを開くと、余白一杯に使われた画面に、文学の冒頭部分が、雨が降るように縦長に現れては消える(現在は更新が停止しているみたいだ)。

そして、冒頭文をタップすると、著作権が切れた文学作品が公開されている「青空文庫」に飛び、その文章の続きが読める、という仕組みになっている。

要するに、「繋ぐ」役割も担っている、というわけだ。

このサイトの作者は、今村昼寝さんというデザインとプログラミングを学んでいる人で、その他にも、お風呂に文字が浮かぶ「文学入浴剤」や、生け花のように小説の一節を挿すことができる「生けふみ」など、文学をデザインによって表現するユニークな作品を発表している。

この「文学入浴剤」は、特にTwitter上で大きな話題となり、ネットニュースでも取り上げられている。

文字入浴剤は彫刻家・高村光太郎の随筆『永遠の感覚』の冒頭部分を印刷したOHPフィルムと入浴剤を小さなビニール袋に封入した作品。お風呂に入れると入浴剤だけが水に溶け、半透明の素材に印刷された文字が浮かび上がっているように見えます。

Twitterで「文字入浴剤」を発表したのは、今村昼寝さん(@nanchakuriku02)。入浴剤の使用後も文字が残るようなものにしているのは、「作者の息遣いを感じられる、ある程度まとまった文章と向き合えた方が私はうれしいと感じるため、文章の形は保ちたくこのような形を取った」と語っています。

「お風呂に文学の一節が浮かぶ入浴剤」が儚く美しい 作者に聞いた「一対一で本と向き合いたい」思い

インタビューのなかで、今村昼寝さんは、このアイデアは他人の評価やレビューなどに左右されず、文学と一対一で向き合う方法を模索しているなかで発案したものだ、ということを語っている。

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