ソフス・ヤコブセン / 絵

ソフス ヤコブセン

ソフス・ヤコブセン『snowy churchyard』

森のなかで、雪が積もった静かな建物。出ていったのか、帰ってきたのか、人の足跡が残っている。足跡の付近には、一羽の鳥がいる。

絵の作者は、ソフス・ヤコブセン(Sophus Jacobsen)。1833年に生まれ、1912年に亡くなった、ノルウェーの風景画家である。

作品の題名は、『snowy churchyard』。「snowy」は、「雪が降る、雪の積もった、雪に覆われた」といった意味で、「churchyard」は、「教会の中庭、教会附属の墓地」を意味する。

雪のなかの教会付属墓地、といったタイトルだろうか。もの静かで、寂しさもあり、同時に落ち着く絵でもある。

ノルウェーの代表的な画家と言えば、エドヴァルド・ムンクがよく知られている。ムンクが生まれたのは1863年なので、ヤコブセンは、ムンクより一世代前の画家と言える。

ただ、ヤコブセンはノルウェーの生まれと言っても、20歳の頃には、ドイツのデュッセルドルフに移り住んでいるようだ。

ヤコブセンの絵は、静寂を漂わせた暗めの色調で、雪景色や水辺の風景が描かれる。

ノルウェーの画家

ノルウェーの画家

ノルウェーの画家

激しい内面を描いた絵ではなく、写実的な風景画が多く、一つ一つの風景に宗教的な厳かささえ漂っているように見える。

インターネット上でも作品以外にはあまり情報がなく、少なくとも日本では画集や関連の本も出版がないこともあり、詳しい画家や作品に関することは分からないが、ただ、寂しげで暗い風景画が多く、月夜の景色が数多く描かれている。

また、ヤコブセンの絵は、同じ北欧出身で同時代の画家でもあるデンマークのヴィルヘルム・ハンマースホイの雰囲気とも少し似ている。

ハンマースホイは室内画も多く、ヤコブセンは風景画という違いはあるものの、静かな作風には近いものを感じる。

ヴィルヘルム・ハンマースホイ 『窓辺の二人』 1895年頃

雪のクレスチャンスボー宮殿 1909年

以前、ハンマースホイの美術展で、「静かなる詩情」というフレーズが使われていたが、ヤコブセンの絵もまた、「静かなる詩情」という言葉が合うように思う。

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